目次
ITILとは
ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、ITサービスマネジメント (ITSM:IT Service Management)の成功事例をまとめた書籍群です。
ITSMの導入は多くの企業にとって重要な経営課題ですが、要求範囲が広大なため、具体的な取り組み方法や導入の優先度設定を、自社ですべて検討することは現実的ではありません。ITILはITSM導入のガイドラインとして、ベストプラクティス(成功事例)を提供しています。
ITSMの規格には、COBITやISO 20000、MOFなど複数存在しますが、ITILは最も代表的な規格として世界中に認知されています。
※ITSMとは
ITSMとは、事業部門が必要とするITサービスの計画/供給/改善を管理する仕組みを指します。ITSMの導入により、「ビジネス視点でのITサービス運用へ転換」「情報システム業務のルール化」「コストの適正化」の3つの効果が期待されます。
ITILの歴史
ITIL v1
ITILは1989年、イギリス政府の中央コンピュータ電気通信局から出版されました。
英国政府は、運用効率化が進まず、膨大なIT投資に比べ得られる効果が小さかったため、運用のガイドラインを策定し、企業に対しガイドラインに沿ったITサービスの提供を求めました。
この際、ITを有効活用している先進企業を調査し、40冊を超える書籍群としてまとめられたガイドラインがITIL v1でした。
ITIL v1では、ヘルプデスク管理、変更管理、ソフトウェアの配布と制御など、主にITサービスのサポートに関連するプロセスについて説明されていました。
また、容量管理、緊急時対応計画、可用性管理、コスト管理などについても言及されており、これらは最新バージョンであるITIL 4(2019年に公開)まで受け継がれています。
ITIL v2
1999年~2004年にかけてリリースされたITIL v2は、ITILが世界的に認知されるきっかけとなりました。
40冊を超えたITIL v1をベースに、重複の排除、整合性の取れない部分の整理、新IT概念の組み込みを行い、「サービスサポート」「サービスデリバリ」「サービスマネジメント導入計画立案」「ビジネスの観点」「アプリケーション管理」「ICTインフラストラクチャ管理」「セキュリティ管理」の7冊の書籍にまとめたものがITIL v2です。
なかでも「サービスサポート」「サービスデリバリ」の2冊が中心となっており、問題管理、リリース管理、インシデント管理、IT資産の財務管理、セキュリティ管理、サービス継続性管理について語られています。
ITIL v3
ITIL v3 は2007年に公開され、2011年にアップデートされました。
ITIL v2の中心であったサービスサポートとサービスデリバリの考えを受け継ぎつつ、ITIL v3では「サービスライフサイクル」の概念が新たに追加され、それに伴い全体のプロセスが整理されました。
ITサービスのライフサイクルは「サービスストラテジ」「サービスデザイン」「サービストランジション」「サービスオペレーション」「継続的なサービス改善」の5つで、それぞれが1つの書籍にまとめられています。
サービスライフサイクルという概念の導入により、IT運用という視点だけではなく、戦略や設計、移行の段階で、誰がどのようにITサービスに関わるのかが明確になりました。
これにより、運用部門と開発部門や企画部門、事業部門の連携が考えられるようなりました。
それぞれのライフサイクルにおける主要なプロセスには以下のようなものがあります。
サービスストラテジ | サービスデザイン | サービストランジション | サービスオペレーション | 継続的なサービス改善 |
---|---|---|---|---|
財務管理 | サービスカタログ管理 | 変更管理 | イベント管理 | 7ステップ改善 |
需要管理 | サービスレベル管理 | サービス資産および構成管理 | インシデント管理 | サービス測定 |
サービスポートフォリオ管理 | キャパシティ管理 | ナレッジ管理 | リクエスト対応 | サービスレポート |
可用性管理 | 移行計画及び支援 | アクセス管理 | ||
ITサービス継続性管理 | リリース及びデプロイ管理 | 問題管理 | ||
情報セキュリティ管理 | サービスバリデーション及びテスト | サービスデスク | ||
サプライヤ管理 | 評価 | 技術管理 | ||
アプリケーション管理 | ||||
ITオペレーション管理 |
ITIL 4
ITIL 4 は、デジタル時代に適用可能なサービス管理フレームワークとして2019年2月にリリースされました。
ITIL v3以前は、利用者にITサービスを提供するという考え方でしたが、ITIL 4ではITサービスの提供者と利用者がITサービスを共に創っていくという考え方に変わりました。
ITIL 4では、インシデント管理・問題管理・ナレッジ管理などの「プロセス」と、サービスデスクなどの「機能」の両者が、「プラクティス」と表現されるようになりました。
ITIL 4には全部で34個のプラクティスがあり、「一般管理プラクティス」「サービス管理プラクティス」「技術管理プラクティス」の3種類に分類されています。
一般管理プラクティス | サービス管理プラクティス | 技術管理プラクティス |
---|---|---|
アーキテクチャ管理 | 可用性管理 | 展開管理 |
継続的改善 | 事業分析 | インフラストラクチャとプラットフォーム管理 |
情報セキュリティ管理 | キャパシティとパフォーマンス管理 | ソフトウェアの開発と管理 |
ナレッジ管理 | 変更コントロール | |
測定とレポート | インシデント管理 | |
組織の変更管理 | IT資産管理 | |
ポートフォリオ管理 | モニタリングとイベント管理 | |
プロジェクト管理 | 問題管理 | |
関係管理 | リリース管理 | |
リスク管理 | サービスカタログ管理 | |
サービス財務管理 | サービス構成管理 | |
戦略管理 | サービス評価とテスト | |
サプライヤ管理 | サービス継続性管理 | |
人材管理 | サービスデザイン | |
サービスデスク | ||
サービスレベル管理 | ||
サービスリクエスト管理 |
ITILは何から取り組むべきか
多くの企業がサービスデスクの改善からITILを導入
ITIL 4では34ものプラクティスが定義されており、はじめてITSMを導入する企業にとって何から着手すべきかは悩ましい問題です。
ITILではサービスデスクをITSMの根幹を成す機能と定めており、一般的に最初に整備すべきプラクティスとして認知されています。
サービスデスクは、要求実現/インシデント管理/問題管理/変更管理などITILの複数のプラクティスを供給します。
サービスデスクが供給するプラクティスの例 | |
---|---|
要求実現 | 従業員から寄せられるITサービスに対するさまざまなリクエストを管理し、実現するプラクティス。 |
構成管理(CMDB) | ITシステムの構成を管理するプラクティス。 |
インシデント管理 | システム停止やパフォーマンス上の問題が原因でサービスが中断した場合の復旧または修正を管理するプラクティス。 |
問題管理 | 複数のインシデントから成る問題の根本原因分析(RCA)を分析し終止符を打つプラクティス。 |
変更管理 | ITサービス全体に対する変更作業(追加/修正)を管理するプラクティス。 |
システム管理者の会が会員企業向けに実施したアンケート調査によると、サービスデスクおよびサービスデスクが供給するプラクティスの改善からITSMを導入しているという回答が多数を占めます。
ITSMに基づき情報システムサービスを管理するツールを、ITサービスマネジメントシステム(ITSMS:IT Service Management)と呼びます。
ITSMSは、ITSMで定義されるサービスリクエストの処理・構成管理・インシデント管理・問題管理・変更管理など複数の機能を備えており、ITSMSを導入することで、効率的にITSM対応のサービスデスクを構築することが可能となります。
ITSMSに必要な要素
国内外のさまざまな企業がITSMSを提供しており、ITSMSごとに対応できる機能が異なります。
ITSMSを導入する際には、以下の要素が満たされているかを確認する必要があります。
効率的な問い合わせの管理機能
サービスデスクにはメールやチャット、電話などさまざまなチャネルから問い合わせがあります。
さまざまなチャネルから届く問い合わせを整理して対応するためには、チケットシステムのように問い合わせを一元管理できる機能や、サービスカタログによる問い合わせチャネルの統一が必要です。
IT資産管理と構成管理(CMDB)
サービスデスクがIT資産の情報を把握できていなければ、問い合わせがあるたびにIT資産管理チームにIT資産の状況を確認しなければなりません。
問い合わせにスムーズに対処するために、サービスデスクとIT資産は同じITSMツールで管理されるべきです。
また、IT資産の情報だけでなく、IT資産間の関係性を可視化できるCMDB(構成管理データベース)もあれば、インシデントが発生した際に、影響範囲を素早く正確に把握できるようになります。
インシデント管理・問題管理・変更管理
インシデント管理はサービスデスクの重要な業務ですが、インシデントへの対応だけでは問題の根本的な解決にはつながりません。
インシデントに対処するだけではなく、問題管理と変更管理のプロセスによってインシデントの発生原因を解明し、対策を講じることで、同じインシデントが繰り返し発生することを防ぐ必要があります。
ITIL準拠のITSMS、Freshservice
Freshserviceは、「インシデント管理」「資産管理」「問題管理」「変更管理」「プロジェクト管理」などに対応した、ITIL準拠のITSMツールです。
サービスデスク業務を効率化するチケット管理システム
Freshserviceでは、メールやチャット、電話などマルチチャネルからの問い合わせをすべて「チケット」として一元管理。
チケットには、問い合わせの内容に合わせたカテゴリやタグを複数登録できるほか、期限や優先度、担当者なども登録可能です。
登録したカテゴリやタグに応じて、適切な部門や担当者への割り振りを自動で行えます。
また、期日や優先度によるチケットの絞り込み機能も備えており、重要なチケットのみを抽出して即座に対応にあたることができます。
IT資産管理と構成管理を自動化
Freshserviceなら、ソフトウェア・ハードウェア・ライセンスすべてのIT資産を一元管理できます。
あらゆる資産を一つのITSMツールで管理することで、資産の利用状況を正確に把握し、無駄なく配分することができます。
また、ディスカバリ機能が組織内のすべての資産を自動でスキャンし、資産の種類、バージョン、更新履歴を自動で取得・更新します。加えて、組織内のIT資産の個別情報だけでなく、それぞれの関連性までも可視化します。
これにより、なんらかのIT資産にトラブルが発生した場合、他の資産に及ぶ影響の範囲を迅速に特定することが可能です。
インシデント管理・問題管理・変更管理機能
Freshserviceでは、チケットとして登録した問い合わせをインシデント、サービス要求、リリース申請、変更申請などに自動で分類し、サービスデスクの負担を軽減します。
過去の応対履歴を期間別やグループ別に絞り込んで確認できるアナリティクス機能も搭載しており、インシデント対応だけでなく根本的な原因究明と問題管理をサポートします。
さらに、リリース管理や変更管理などのプラクティスとCMDBを関連付けることにより、ITサービスの提供・変更による影響範囲を可視化。ITサービスの提供・変更によるリスクを最小限に抑える事が可能です。
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