問い合わせ管理

ヘルプデスクの運用とは?担当者の業務負担を軽減する方法を紹介

ヘルプデスクを運用することで、社内外からの問い合わせを1カ所に集約できることからノウハウを蓄積しやすくなったり、各部署での業務のスムーズな遂行を支援できたりするといったメリットが得られます。

ただし、さまざまなメリットがある一方で、ヘルプデスクでは問い合わせが殺到することによるリソース不足や、緊急対応の多さによる業務負担の増加などが課題視されているため、なるべく各担当者の負担を軽減し、スムーズに業務を進められる環境を整えることが大切です。

この記事では、ヘルプデスクを運用する重要性やメリット、主な課題、各担当者の業務負担を減らす方法などをご紹介します。

目次

ヘルプデスクの運用とは

ヘルプデスクは、自社の商品や社内で利用しているツールの使い方、これらのツールの不具合・トラブルに関する問い合わせなどに対応し、企業における業務効率や生産性の維持、顧客満足度の向上などを促す役割を持ちます。

ヘルプデスクを運用する際は、「運用体制」「運用設計」「運用管理」の3つの要素を意識することで、ヘルプデスク業務を担う従業員に過度な負担をかけず、適切な運用を実現できます。

 運用体制

ヘルプデスクを運用する際は、はじめに運用体制を見直しましょう。非常時にすぐに対応できるよう24時間365日稼働させているケースも見られますが、常に稼働している状態を維持するためには多くのリソースを必要とし、従業員の負担を増やしてしまいます。

そのため、基本的にはツールなどを使用して監視のみを行い、必要に応じて問い合わせやトラブルに対応するかたちで体制を整えるのもよいでしょう。

ただし、システム障害や自然災害などで社内全体に大きな被害が想定される事態において、なるべく業務停止によるリスクを抑え、速やかに通常業務に戻れるよう非常時の運用体制を検討しておくことも重要です。

運用設計

多くのシステムは常時利用できることを想定して作られているため、これらのシステムを社内外のユーザーが問題なく利用できるように運用方針を設計する必要があります。運用設計を行う際は、以下のような3W1Hを意識するのがおすすめです。

  • When(いつ設計するのか)
  • Who(誰が設計するのか)
  • What(どのような運用項目を設計するのか)
  • How(どのような体制で運用するのか)

システムが正常に稼働している状態とはどのような状態であるかを明確にし、常に正常に稼働する状態を実現するにはどのような運用項目を設計し、どのように体制を整える必要があるのかを検討しましょう。

運用管理

ヘルプデスクでは、日頃から社内外を問わず従業員や顧客からの問い合わせやクレームなどの対応を行っています。

単に届く問い合わせなどに受け身で対応するのではなく、頻繁に届く問い合わせ内容はヘルプデスク側であらかじめFAQにまとめておいたり、システムの利用者がつまずかず快適に利用できるよう、使用方法のマニュアルの内容を見直してわかりやすくまとめたりするといった工夫をし、問い合わせやクレームが届く頻度を減らせるよう働きかけることもおすすめです。

運用管理は、このようなヘルプデスクの業務内容を管理したり、改善したりすることを指します。

ヘルプデスクを運用する目的

ヘルプデスクは、社内システムや自社の商品・サービスに関する不具合やトラブル、疑問などを解決し、従業員が円滑に業務を進行できることや、顧客が快適に自社の商品やサービスを利用できることを目的として運用されます。

そのため、問い合わせへの対応に加え、「運用管理」でもあげたような、FAQの作成や商品・サービスのマニュアルの改良、商品やサービスの利用に役立つ情報の提供などを行い、従業員や顧客が社内システムや自社の商品・サービスを利用しやすい環境にするための整備が求められることもあります。

ヘルプデスクの運用が重要な理由

ヘルプデスクでは、従業員や顧客からの問い合わせ対応による課題解決や、快適に業務や商品・サービスの利用が行えるよう環境を整えることを目的として運用されますが、これらの対応を適切に行うことで、リピーターやファンの獲得による企業の売り上げの増加などにも寄与する可能性があります。

例えば顧客の問い合わせに対して真摯に向き合い、課題を解決した際には顧客満足度が向上します。顧客満足度が向上することで、自社に対しても好印象を持たれやすくなるため、継続して自社の商品やサービスを利用してもらえたり、ほかの商品やサービスを利用してもらえたりするようになり、売り上げの増加が期待できます。

また、社内の従業員に対しても適切に問い合わせ対応を行い、業務のサポートを行うことで、自社の商品やサービスを利用する顧客が増えてきた際にも、スムーズに業務を進められるようになり、生産性の向上にもつながるでしょう。

ヘルプデスクの種類や主な業務内容

ここまで、ヘルプデスクとは何かを、ヘルプデスクを運用する目的や、適切に運用することが重要な理由とあわせてご紹介しました。ヘルプデスクは、社内からの問い合わせに対応する社内ヘルプデスクや監視オペレーターなど、業務内容に合わせて役割を分担していることもあります。ここでは、ヘルプデスクの種類やそれぞれの主な業務内容をご紹介します。

社内ヘルプデスク

社内ヘルプデスクは、社内の従業員から寄せられる問い合わせに対応する役割を持ち、情報システム部門や総務部門に設置されることが一般的です。業務内容は多岐にわたり、従業員が使用する社内システムの使い方のレクチャーやトラブル対応、マニュアルの作成などに加え、PCやスマートフォンなどの社用デバイスの導入時のキッティングやアカウント管理、メンテナンス、アップデートなどがあげられます。

業務内容が幅広いことから、本来はヘルプデスクとは無関係な質問が寄せられ、社内ヘルプデスクの負担が増えている点も課題視されています。

社外ヘルプデスク

社外ヘルプデスクは、自社の商品やサービスを利用する顧客からの問い合わせに対応し、社内ヘルプデスクと同様に情報システム部門に設置されることが一般的です。

社外ヘルプデスクの業務内容は、主に顧客から寄せられる自社の商品やサービスの使い方や不具合、トラブルに関する問い合わせへの対応を行いますが、まれにクレーム対応も行うことがあります。顧客満足度を高め、今後も自社の商品やサービスを利用してもらえるよう、社外ヘルプデスクでは問い合わせやクレームに対して真摯に対応することが求められます。

最近では、社外ヘルプデスクの負担を減らすために、よくある質問に対しては自動で返信できるようにチャットボットを用いている企業も見られます。

監視オペレーター

監視オペレーターは、専用の監視ツールを用いてサーバーやデータベースなどのシステムの稼働状況を監視し、異常が見られた際は、管理者やシステム保守エンジニアへの報告、異常箇所の調査、復旧作業などをマニュアルに沿って進めます。

そのほかにも、社内ネットワークを安定して利用できるようネットワーク機器の通信状況を監視し、ネットワーク障害への対策を行います。

ヘルプデスクと似た職種との違い

ここまで、ヘルプデスクの種類や主な業務内容をご紹介しました。ヘルプデスク以外にも、社内の従業員や顧客のサポートを行う職種は複数あります。ここからは、ヘルプデスクと似た職種との違いについてご紹介します。

システム運用保守(社内SE)との違い

社内SEとも呼ばれるシステム運用保守とヘルプデスクは、どちらも従業員からの「PCの設定がうまくいかない」「社内で使用しているシステムが正常に動作しない」といった不具合やトラブルに関する問い合わせに対応する点で共通していますが、システム運用保守では社内システムの開発に関するトラブルにも対応します。

一方で、ヘルプデスクはシステム開発に関する問い合わせは専門外となり、すでに運用中のシステムの不具合やトラブル、疑問点などに関する問い合わせ対応を行うため、システム運用保守とヘルプデスクは、対応可能な領域が異なります。

カスタマーサポートとの違い

カスタマーサポートは、社外で自社の商品やサービスを利用する顧客からの問い合わせやクレームなどに対応する役割を持ち、対応する内容は、商品やサービスに関する疑問や不具合、トラブルなど、ヘルプデスクと大差ありません。

そのため、ヘルプデスクの中でも社外のユーザー向けにサポートを行う社外ヘルプデスクとカスタマーサポートは、同義として認識しても問題ないでしょう。

なお、コールセンターも顧客からの問い合わせ対応を行いますが、ヘルプデスクやカスタマーサポートは顧客から連絡が来たものに対してサポートを行うのに対し、コールセンターでは顧客へ自ら連絡をする場面もある点で、業務内容が少し異なります。

ヘルプデスクの基本的な運用の流れ

ここまで、ヘルプデスクの種類や主な業務内容、似た職種との違いをご紹介しました。ここからは、ヘルプデスク運用における問い合わせが届いてから返答するまでの基本的な流れをご紹介します。

1.問い合わせに関するヒアリングを行う

従業員や顧客からの問い合わせが届いたら、その内容に対して正確な回答や解決策を提示できるよう、問い合わせに関するヒアリングを行います。

電話で問い合わせを受けている場合は、焦らずにゆっくりと話すことが大切です。また、問い合わせを行った従業員や顧客がうまく状況を説明できない場合もあるため、不足している情報は一問一答形式で一つずつ丁寧に質問しましょう。

メールやチャットで問い合わせを受けている場合は、電話とは異なり相手からの返事に時間がかかる場合があります。そのため、なるべく少ないやりとりでヒアリングができるよう、あらかじめヒアリング項目を作成しておいたり、情報を小出しにせず質問内容をまとめて送信したりするといった対応を意識するとよいでしょう。

2. 問い合わせ内容に対する解決策を考える

必要な情報がそろったら、その内容をもとに解決策を考えます。ここ[15] で明確に解決策を答えられなかったり、回答内容に自信が持てなかったりする場合は、焦らずほかのヘルプデスク担当者や有識者などに確認し、必要に応じて調査を行いましょう。

ここで誤った解決策を提示してしまった場合、対応が不適切であったことからクレームにつながる恐れもあるため、即答できない問い合わせに関しては自力で解決しようとしないことが大切です。

以前も対応したことのある問い合わせや、適切な解決策が明確に提示できる場合は、そのまま「4. 問い合わせに回答する」に進めます。

3.不明点を調査する

ヒアリング内容を踏まえて、解決策がわからない場合や不明点、確認事項がある場合は、ほかのヘルプデスク担当者や有識者に確認したり、自ら調査を行ったりする必要があります。PCなどのIT機器に関するトラブルの場合は、各メーカーへ問い合わせることもあるでしょう。

また、問い合わせ内容や調査内容によっては現物を確認する必要があることから、トラブルが生じた現場へ直接赴くケースもあります。

4. 問い合わせに回答する

問い合わせ内容に対する回答や解決策が明確になったら、従業員や顧客へ回答します。基本的に、問い合わせた人が電話で問い合わせた場合は電話で、メールやチャットで問い合わせた場合はメールやチャットなど、手段を合わせて回答しましょう。

回答や解決策を伝える際は、説明が長くわかりにくくなってしまう恐れがあるため、要点をまとめて簡潔に伝えることが大切です。また、従業員や顧客は問い合わせた分野に関する専門的な知識やスキルを持っていない可能性もあるため、専門用語はできるだけ使わず、かみ砕いた表現を意識することが大切です。

ヘルプデスクを運用するメリット

ここまで、ヘルプデスクを運用する際の基本的な流れをご紹介しました。ヘルプデスクを運用することで、社内外での問い合わせを1カ所に集約できたり、業務のスムーズな遂行を支援できたりするといったメリットがあります。ここからは、ヘルプデスクを運用するメリットをご紹介します。

社内での情報伝達を円滑に進められる

規模の大きな企業の場合、部署間でのコミュニケーションや情報伝達がしづらく、不具合やトラブルなどの緊急時にスムーズな連携が取れないことがあります。

このとき、ヘルプデスクが存在することで、各部署への連絡を適切に行えるようになり、スピーディーな解決につながります。このように、ヘルプデスクは社内の部署間での情報伝達や調整役としても大きな役割を果たします。

社内外の問い合わせを1カ所に集約できる

ヘルプデスクを運用していない場合、各部署で従業員や顧客からの問い合わせを処理することになり、解決のためのヒアリングや情報収集などに多くのリソースを割かなければならず、本来の業務がおろそかになってしまうことがあります。

ヘルプデスクを運用することで、社内外からの問い合わせを1カ所に集約し、多くの問い合わせをヘルプデスク内で解決できるようになるため、各部署での負担軽減につながるでしょう。

トラブル解決のノウハウを蓄積しやすくなる

ヘルプデスクに問い合わせを集約することで、ヘルプデスク内でトラブル解決のノウハウを蓄積しやすくなります。このようにノウハウが蓄積されることによって、将来的に届く問い合わせを素早く処理できるようになるだけでなく、これまでに届いた問い合わせやトラブルの内容をもとに、社内での業務フローの改善や、新たな商品やサービスを生むアイデアを得られる可能性もあるでしょう。

このように、ヘルプデスクでノウハウを蓄積することで、問い合わせのスムーズな解決や、事業の拡大といった効果も期待できます。

業務のスムーズな遂行を支援できる

ヘルプデスクを運用せず、各部署で問い合わせやトラブルに対応していた場合、本来の業務が予定どおりに進められず、生産性が低下してしまう恐れがあります。このとき、問い合わせ対応の業務をヘルプデスクに一任することで、各部署での業務がスムーズに遂行できるようになるでしょう。

また、社内の従業員がなるべく疑問を持たずに業務を進められるようマニュアルやFAQを作成しておくことで、さらに円滑に業務を遂行できる支援ができます。

顧客満足度を高めやすくなる

ヘルプデスク運用では、社内の従業員以外にも、顧客からの問い合わせやクレーム対応を行います。これらの対応を丁寧に行うことで、顧客からは「信頼できる企業だ」と認識してもらいやすくなることから、顧客満足度の向上につながります。

また、ヘルプデスクを運用することで、顧客の声を拾いやすくなります。アンケートやインタビューによる顧客からの感想以外にも、実際に問い合わせやクレームで届いた自社の商品やサービスの不便な点や疑問点などを解消し、これらの声を取り入れた新機能や新商品などを提供することで、さらなる顧客満足度の向上が期待できるでしょう。

ヘルプデスクの運用における課題

ここまで、ヘルプデスクを運用するメリットについてご紹介しました。社内での業務を円滑に進められたり、顧客満足度の向上に貢献できたりするなどのメリットがある一方で、ヘルプデスクでは問い合わせを集約することによる件数の多さや対応範囲の広さ、リソース不足などが課題視されています。具体的な課題は、次のとおりです。

問い合わせ数の多さによって対応が遅れてしまう

ヘルプデスクを運用することで、社内外からの問い合わせを集約することになるため、問い合わせの件数が膨大になる場合があります。特に規模の大きな企業の場合は、従業員数が多い分問い合わせ件数も増加するでしょう。

問い合わせの中には、簡単なものから複雑なものまでさまざまなものがあり、解決に時間を要する内容の場合は、該当の従業員の業務が滞り生産性が低下してしまったり、顧客が不便さを感じてしまったりすることがあります。

緊急対応の多さから負担を感じやすい

問い合わせの中には、緊急のトラブル対応を必要とするものもあり、場合によっては深夜や休日に対応しなければならないこともあります。また、トラブルの中には「今日中に対応してほしい」「解決しないと業務を進められない」といった業務の遂行に関わる緊急対応も含まれるため、時間に追われながら対処する場面もあることから、業務負担を感じやすいケースも考えられます。

なお、複数の部署間での調整役として働きかけ、業務の指示を出す場合も、双方のスケジュールやリソース状況を把握する必要があり、調整に時間や手間がかかることがあります。

常に知識を習得する必要がある

ヘルプデスクでは、業務の円滑な遂行や問い合わせに対するスムーズな解決ができるよう、OSやさまざまな業務で扱うシステムのアップデートに合わせて、新たな知識やスキルを習得し続ける必要があります。

しかし、日頃から問い合わせの数が多いことに加えて、緊急性の高い対応が殺到した場合、知識やスキルの習得に充てる時間の確保が難しく、問い合わせ対応が素早く行えなかったり、マニュアルやFAQの更新が追いつかなかったりするといったケースもあります。

対応する範囲が広い

ヘルプデスクでは、勤怠管理や営業支援、経費精算、顧客管理、販売管理など社内の業務に関わるさまざまなシステムの問い合わせに対応する必要があり、企業の規模が大きくなるほど使用するシステムの種類や数も増え、対応範囲が広がります。

また、これらのシステムのトラブルを迅速に解決できるよう、知識やスキルの習得だけでなく、より効率よく業務を進められるよう新たなシステムを導入したり、現状の環境の見直しを行ったりするといった業務も発生するため、限られた時間の中で多くのタスクをこなす必要があります。

説明が相手に伝わらないことがある

問い合わせを行う従業員や顧客は、PCやシステムに関するIT知識がまったくない場合があり、専門用語を交えた説明などが伝わらないことがあるだけでなく、問い合わせ内容を正確に伝えられない可能性があります。リモート環境で問い合わせを受けている場合や、画面共有をしながらのやりとりが難しい状況下では、通話での音声のみで状況把握や指示を出す必要があり、さらに難易度が高まるでしょう。

そのため、ヘルプデスクでは正確に不具合やトラブルの状況をくみ取れるよう、わかりやすい言葉で順を追いながら丁寧に質問・説明をすることが大切ですが、説明が難しく思うように内容を伝えられないことから、ストレスに感じる場合があります。

成果を理解されにくい

ヘルプデスクは、社内外でのトラブルやクレームに対応することで業務を円滑に進めたり、顧客満足度を高めたりする役割を持ちますが、直接企業の売り上げや利益にはつながらないため、上層部から成果を理解されにくい場合があります。

そのため、日々数多くの問い合わせを適切に処理していたとしても、評価につながらないこともあるため、モチベーションの低下やストレスの蓄積につながる可能性もあるでしょう。

対応できるリソースが不足している

ヘルプデスクに問い合わせを集約したものの、対応できるリソースが不足しており、エンジニアや総務など別部署の従業員が対応を行わざるを得ず、業務効率が低下しているケースも見られます。

また、企業の売り上げに直結する成果を出さない部署であるが故に成果を理解されにくく、人材採用や育成のコストを割いてもらえないことから、慢性的な人材不足に陥る可能性もあります。

人材不足が慢性化すると、1人が特定の内容の問い合わせに集中して対応することによる属人化や、各問い合わせへの対応の遅延といったリスクも懸念されます。

ヘルプデスクの運用における負担を減らす方法

ここまで、ヘルプデスクを運用する際にあげられる課題についてご紹介しました。これらの課題を踏まえて、ヘルプデスク運用の負担を減らすためには、以下のような方法が考えられます。

業務効率化を図る

ヘルプデスクの業務を効率化させることで、1件あたりに要する時間を減らせるため、限られた時間の中でより多くの問い合わせに対応できるようになります。業務効率化を測る際は、具体的に以下のような方法があげられます。

担当者ごとに対応する範囲を明確に定め、進捗管理をする

担当者ごとの対応範囲があいまいな場合、特定の業務が1人の担当者に集中して負担が増えてしまったり、誰も対応していない問い合わせが生じたりしてしまう可能性があります。

そのため、担当者ごとに対応する範囲を定め、進捗管理をしてそれぞれの業務状況やタスク量を視覚的にわかりやすくするとよいでしょう。このように管理体制を整えることで、業務の属人化や業務負担の偏り、問い合わせへの対応漏れなどを防げます。

テンプレートや定型文を作成する

メールやチャットでの問い合わせ対応を行う際は、必ず使用する文章やよく使う文章などをテンプレートや定型文として登録しておき、最小限の入力で送信できる仕組みを整えておくとよいでしょう。電話対応の場合も、トークスクリプト(台本)を作成しておくことで、業務に不慣れな担当者でもスムーズな対応が可能です。

このようにテンプレートや定型文を豊富に用意しておくことで、問い合わせへの対応スピードを速められるだけでなく、担当者ごとに対応の質が変わらず、一定の業務品質を維持できるようになります。

各問い合わせへの対応時間を把握する

従業員や顧客からの問い合わせを受けた際に、解決までにかかった時間を計測するのもおすすめです。どのような対応にどのくらいの時間がかかるのかを把握することによって、対応時間の短縮方法や、複数の問い合わせが同時に届いた際の優先順位などを検討しやすくなります。

このような問い合わせごとの対応時間も、担当者ごとにまとめておくことで、タスクの割り振りやタスク過多の担当者のサポートなどもしやすくなるでしょう。

問い合わせ対応のマニュアルを作成する

ヘルプデスクの業務を円滑に進めるために、従業員や顧客向けのマニュアル・FAQ以外にも、ヘルプデスク専用のマニュアル・FAQも用意しておくとよいでしょう。過去の問い合わせ内容や解決策、問い合わせやクレーム内容ごとの適切な対応などをまとめておくことで、対応の仕方に迷いづらくなり、迅速な問い合わせ処理が可能になります。

また、問い合わせへの回答ごとの従業員や顧客の反応の種類はいくつか予測し、あらかじめ複数パターンの対応が行えるようにバリエーションを増やしておくことで、予想外の反応によって担当者が戸惑うリスクを避けられます。

問い合わせ件数を減らす

問い合わせ数が多く処理しきれない場合や、従業員や顧客が自力でも解決できる簡単な問い合わせが多く届く場合は、問い合わせ件数を減らせるよう、社内システムや自社の商品・サービスの使い方をわかりやすく解説したマニュアルやFAQなどを用意しておくことをおすすめします。

また、あらかじめ定型文を登録し、問い合わせ対応の内容に応じて自動で適切な回答を返信できるチャットボットの導入もおすすめです。

なお、マニュアルやFAQ、チャットボットを用意した際は、従業員や顧客がすぐに気がつく位置に設置することが大切です。目立たない場所に設置した場合、せっかく用意したとしても、従業員や顧客に利用してもらえない可能性があります。

アウトソーシングや外部ツールを使用する

社内でのリソースが不足しており、問い合わせを処理しきれない場合は、問い合わせ対応業務をアウトソーシングしたり、問い合わせ業務をサポートする外部ツールを使用したりすることもおすすめです。

アウトソーシングでは、プロの担当者が問い合わせ業務を代行するため、問い合わせ業務を一任できるだけでなく、問い合わせ対応の品質向上にもつながるでしょう。また、外部ツールを利用することで、ヘルプデスクに届く問い合わせや担当者の業務状況を一元管理したり、一部の業務を自動化したりできるため、業務効率化に大きく貢献します。ヘルプデスクの運用で主に活用できるツールについては、後ほど詳しくご紹介します。

なお、当社ではヘルプデスク運用のサポートを行うサービスデスクツールとして、「Freshservice」を提供しています。

Freshserviceでは、メールや問い合わせフォーム、社内コミュニケーションツールなどさまざまな媒体からの問い合わせを自動で一元管理できるだけでなく、これまでに届いた問い合わせデータをもとにFAQやカスタマーポータルを作成できます。

Freshserviceについて詳しく見る

担当者のスキルやモチベーションを高める

ヘルプデスクの運用を効率化させるためには、各担当者のスキルアップやモチベーションの維持も重要です。これらを満たすためには、各担当者との面談や研修を行うといった方法があげられます。

面談の実施

ヘルプデスク業務に対するモチベーションの維持や、タスク状況を正確に把握するために、定期的に上司と各担当者での面談を実施しましょう。ヘルプデスク業務を行う中で生じた、「クレーム対応がつらい」「問い合わせが多すぎてさばききれない」「このような問い合わせの対応の仕方がわからなかった」といった悩みや疑問などを面談を通して相談することで、各担当者が置かれている状況を理解しやすくなります。

なお、悩みや疑問を抱えたままモチベーションが低下してしまわないよう、各担当者の上長は日頃の業務のフィードバックを行ったり、悩みに対する具体的な解決策を示したりすることも大切です。

研修の実施

ヘルプデスク業務で扱うシステムなどは日々アップデートされ、常に新しい知識やスキルを習得する必要があるため、新人・ベテランを問わずすべての担当者に対して定期的に研修を行うことをおすすめします。すべての担当者に同じ研修を実施することで、各担当者のスキルアップが狙えるだけでなく、部署内の業務品質も一定の水準を保てるようになるでしょう。

また、定期的に研修を行うことによって新人の担当者も業務への理解を深めやすくなるため、速やかに業務に慣れることも期待できます。

ヘルプデスクの運用におすすめのツール

ここまで、ヘルプデスク運用の負担を減らす方法をご紹介しました。「アウトソーシングや外部ツールを使用する」でも触れたように、ヘルプデスク業務を効率化させるためには、それぞれの作業を支援する外部ツールの使用がおすすめです。ここでは、ヘルプデスクの運用におすすめのツールをご紹介します。

問い合わせ管理ツール

問い合わせ管理ツールでは、従業員や顧客から寄せられた問い合わせをツール上で管理し、タスク管理が行えます。問い合わせの数や内容を可視化しやすくなるため、1人の担当者に業務負担が偏るといったリスクを防いだり、タスクごとの優先度の検討がしやすくなったりするでしょう。

当社では、メールや問い合わせフォームなどに寄せられた問い合わせを一元管理し、自動でタスク振り分けが行える「Freshdesk」を提供しています。タスクを自動で振り分けられることから、対応の漏れがなくなり、業務品質を高く維持することが可能です。

Freshdeskについて詳しく見る

チャットボット

チャットボットは、主に企業のWebサイトに設置するプログラムで、チャット形式で従業員や顧客からの問い合わせに24時間365日自動で対応できます。よくある問い合わせなどをチャットボットに学習させることで、同様の問い合わせが来た際はチャットボットが代わりに回答を行えるようになるため、ヘルプデスクの業務負担が大幅に軽減します。

手動での問い合わせ対応を行っている場合、問い合わせが殺到した際に回答が遅れることがありますが、チャットボットであればその場で回答がもらえるため、従業員や顧客は問い合わせの混雑状況にかかわらずスムーズに回答が得られます。

FAQツール

FAQツールは、ツール上によくある質問と回答をまとめることで、従業員や顧客が自ら問い合わせ内容を検索し、自力で解決策を得られるようになります。FAQツールを利用することによって、簡単な問い合わせやよくある問い合わせへの対応頻度を減らせるため、ヘルプデスクの業務負担の軽減につながるでしょう。FAQツールには、社内向け用や社外向け用など用途によってツールの種類が分かれるため、導入目的に合わせて適切なツールを選んでください。

なお、当社で提供するFreshserviceFreshdeskでは、過去に届いた問い合わせデータをもとにFAQを作成できるため、FAQの作成にかかる手間や時間を削減できます。

社内向けポータルサイト

社内向けのポータルサイトを作成し、従業員に向けた情報共有を行う方法もあげられます。例えば、社内wikiとして社内で利用するシステムの操作方法や不具合・トラブル時の対処法をまとめたマニュアルを掲載したり、掲示板を設置して従業員同士での情報共有や、社内全体への共有事項の連絡などをスムーズに行えたりするようになるため、問い合わせ数の軽減や、調整役としての業務の負担軽減などが期待できます。

ナレッジ共有ツール

ナレッジ共有ツールは、ヘルプデスクに蓄積された知識や経験といったナレッジをほかの従業員に共有できるツールで、社内向けポータルサイトの中に含める場合もあります。問い合わせ内容に対する適切な対応方法や、過去に行った対応の中で社内全体にも共有したい情報などをすべて1つにまとめられるため、問い合わせ対応を行う担当者目線でも利用しやすいでしょう。

メール共有ツール

メール共有ツールでは、自社に寄せられるメールアドレスを複数人で共有し、問い合わせ内容などを管理できます。メール共有ツールでは「未対応」「対応済み」といったステータス機能によって問い合わせメールを管理しやすくできるだけでなく、各問い合わせに担当者を設定できるため、対応漏れや二重対応してしまうリスクも防ぎやすいでしょう。また、問い合わせ内容に関する相談を行う際も、ツール上から問い合わせごとにチャット画面を開けるようになります。

まとめ

この記事では、ヘルプデスクを運用する重要性やメリット、主な課題、各担当者の業務負担を減らす方法などをご紹介しました。

ヘルプデスク運用にかかる負担を軽減させるためには、問い合わせをスムーズに処理できるようテンプレートや定型文を用意したり、問い合わせ件数を減らせるようツールを導入したりするといった仕組みを整えることや、各担当者のスキルアップ・モチベーション維持のための面談や研修を行うことが重要です。 また、ヘルプデスク業務を効率化させるためには、問い合わせ管理ツールやチャットボットといったツールを導入するのもおすすめです。導入時は適切なツールを選べるよう、あらかじめ導入目的を明確にしておくことが大切です。